大根やぐら
大根やぐらを見ると「冬が来たなぁ」と思う。
子どもの頃は至る所で見かけたものだが、近年は高齢化が進んだせいか、昔ながらの巨大なやぐらはめっきり姿を消した。今では3段だったり、1段だったりと、やぐらの「低身長化」が進んでいる。従事者の高齢化を考えれば、体力面からも安全面からもこうするよりほかにないのかもしれない。
小学校の頃、「スケッチ大会」というものがあった。先生からA3サイズのマニラボールを一人ずつ受け取り、画版を肩にかけ、グループに分かれて校外のスケッチ場所(8か所くらいあっただろうか)へ向かうのだ。午前中にスケッチを済ませ、学校へと戻り給食を食べ、午後は教室で色を塗る、というような丸一日かけた行事だった。スケッチの際、用いるのは鉛筆ではなく割りばし。フィルムケース(当時はデジカメなんてものはなく、フィルムカメラ全盛期だった)に脱脂綿を入れ、墨汁を数滴たらして、即席の「携帯用インク」を作り、そこに割りばしをチョンチョンとつけてスケッチしていく。誰が最初にこれを考えたのか分からないが、うちの学校では昔からこのような謎の道具を使ってスケッチ大会が行われていた。
その際、私が選ぶ場所は9割方、大根やぐらだった。大根やぐらを描いた時だけ何故か入賞した。どうやら私の画力は大根やぐらとの相性が良かったらしい。自分家を描いたこともあったが、正覚寺で入選することは結局一度もなかった。
当時、土手に座って、級友とおしゃべりしながら描いていた大根やぐら。あの頃の景色がもう風前の灯火となりつつある。本当に寂しい限りである。