自伝 ―大学時代の話 5-

「貧乏は恥じることではないが、誇ることでもない」―。そんな言葉をなにかの本で読んだことがある。

だがあえて言いたい。大学生活最初の2年間の私は紛れもなく貧乏だった。

もっとも、当時は貧乏すらもワクワクしていたので精神的苦痛は全くなかったが。

「在学中は学業に専念しなさい」と親からきつく言われ、アルバイトは禁止されていた。そのため生活費の一切は親からの仕送りに頼らざるを得なかった。

我が家の仕送りシステムはちょっと変わっていて、①親が私の口座に10万円振り込む→②必要な分だけ私が引き落とす→③翌月に親が残高を確認して再び10万円になるように振り込む、という形をとっていた。つまり定額ではなかった。

今月2万使えば翌月2万振り込まれる。7万使えば7万振り込まれる。月頭の口座の残高はいつも10万。これより減ることはなかったが、増えることもなかった。

悪知恵を働かせれば「使う予定はないけれど毎月満額引き出す」なんてこともやろうと思えばやれた。ただ私がそんな人間にならずにすんだのは偏に親の育て方が良かったからなのだろう。

なにより、私は親に対して強い負い目があった。ろくに受験勉強もせず、無謀と分かっていながら北海道・大阪の国公立大学を受験し、落ちたあげくに不純な動機で京都の私大を決めた。その間、親はただの一言も愚痴を言わなかった。常に心配し、応援だけしてくれた。しみじみ親不孝者だと思った。ならばせめてこれからはなるべく親の金銭的負担はかけまいと、それがせめてもの自分の罪滅ぼしだと心に誓ったのだった。

ちょうどその頃、テレビで「1ヶ月1万円生活」という番組があった。

これは面白いと私も実践してみることにした。いわば積極的貧乏生活だ。

端から見れば紛れもなく私は貧乏だっただろう。

しかし貧乏ではあったが、自分で決意したことなのでその生活は実に楽しかった。