自伝 ―大学時代の話 15-
あれは1回生の4月下旬の頃だったか、電話で父親から「ブッセーに入ってみないか?」と連絡があった。
はて? ブッセーとは何ぞや?
よく分からないままに日時と場所だけが伝えられ、とりあえず私は行ってみることに。
場所はアパート近くの居酒屋。中にはすでに8名ほどが座っていた。
年は20代くらい。おそらく全員大学生。
リーダーらしき人が音頭を取る。私としては「とりあえず行ったつもり」だったのに「もう入会済み」になっていた。
こうして私を含む新メンバーの歓迎会が始まった。
会が進むにつれ、ようやく理解したのだが、ブッセーとは「仏教青年会」のことだった。
仏教青年会を縮めて「仏青(ぶっせい)」。その趣旨は京都在住の真宗興正派の学生の親睦を深めることにあるという。
勉強会もするが、旅行やバーベキューといったイベントも行うという。
サークル選びを間違ってしまった私にとってはとてもキラキラした内容だった。
やがて歓迎会がお開きとなり、店の前で解散となった時、一人の先輩が私のためにタクシーを停めてくれた。
歩いて5分もかからない距離だったので丁重にお断りしたのだが、「いいよいいよ」と2千円が渡される。
あぁいい先輩もいるもんだ、今度会ったときはお礼を言わなくては、とタクシーの中で一人思う。
しかし次の瞬間、ふと思った。
あれ? あの先輩は何て名前だっけ…?
連絡先(メルアド・電話番号)は交換した。
が、肝心の名前を伺っていなかった。
とりあえず電話帳には「タクシーさん」と名前を付けた。
あれから23年が過ぎた。今では普通にその方を名前で呼んでいる。
けれども私の電話帳はいまだに「タクシーさん」だ。
あのときの感動を忘れないように、あえてそうしている私なのである。
