鐘の役割
場所が本堂であろうと、斎場であろうと、はたまたご自宅のお仏壇の前であろうと、お勤めの際に僧侶は鐘を打ちます。すると鐘の音を合図にお参りの方々が一斉に合掌をし始める―。そんな光景をしばしば拝見するのですが、それは間違いです。
鐘を打つのは「今が合掌のタイミングですよ」と教えているのではなく、「ここでお経が始まり(終わり)ますよ」ということを聴衆の皆さんに伝えているのです。
お寺に限らず、どんな式事にも順序というものがあります。これを「式次第」といいます。例えば学校の入学式を例に挙げれば、おおよそ①開式のことば → ②校長式辞 → ③来賓祝辞 → ④保護者挨拶 → ⑤校歌斉唱 → ⑥閉式のことば、と続きます。これと同じようにお勤めにも「式次第」があり、その始まりと終わりを知らせるのが鐘というわけです。
したがって、お焼香の時間を除けば、お勤めの最中に合掌礼拝をすることはありません。ですので、どれだけ鐘が聞こえようと、何もせずにいるのが正しい作法です。
ただ、集団心理というのは不思議なもので、何人かが同時に同じ動きをすると周囲もそれにつられて同じ行動をとってしまいがちです。ですので「鐘が鳴ったら手を合わす」という人が4~5人いれば、つられてしまうのも無理からぬことなのかもしれません。
しかしだからこそ、こういう正しい作法を僧侶がもっと声を大にして言わねばならないのです。「鐘がなっても気にしない」。これを覚えておいてください。
では合掌はいつするのか。それは式の最初と最後です。
読経するお坊さんをよく観察していてください。最初と最後に“だけ”合掌しているはずです。
皆さんはお坊さんのマネをするだけでいいのです。