青春18きっぷの思い出
「今年の冬から、青春18きっぷのルールが変わる」というニュースを耳にした。「青春18きっぷ」は5枚つづりになっている切符だが、かつてはこの5枚を自分の好きなように使えた。1人で5日間使っても良し、5人でシェアして1日使うも良し、2日分は1人で使って1日を3人で使う…なんて使い方もできた。
実は私も学生時代、この切符に世話になった。19歳の夏休み、私は18きっぷで帰省した。京都から鹿児島まで深夜列車とローカル線を乗り継ぐ旅である。夜の10時ごろ大阪を出て、翌朝7時に博多駅(日をまたいだのでここで2枚目を消費)。昼過ぎには熊本駅に着き、「案外、早いもんだな」と思っていたのも束の間、人吉駅と隼人駅でそれぞれ2時間以上の電車待ち。ヘトヘトになってようやく実家に帰りついたのは夜の11時過ぎ…。それでもその時の達成感と高揚感は忘れられない思い出である。
残り3日分の切符の使い道はすぐに訪れた。帰省した際、久々に会った地元の同級生と18きっぷで京都に行こうという話になったのだ。当時はみんな時間だけはムダにあったから(体感的には1日が40時間くらいあった)、あっという間に話はまとまり、私を含めた3人で京都旅行と相成った。さすがにその時は博多まで新幹線を使ったが、博多から京都までは鈍行を楽しんだ。まさに私にとっての「青春18きっぷ」だった。
しかしそれが今回の改訂で、①連続して使用しなければならない、②複数人での使用はできない、③購入日の時点で使用日を決めなければならない、というルールに変更されるそうだ。今、私が19歳だったならば、もうあの時のキラキラした思い出は作ることができなかったと思うと、なんとも言えない悲しい気持ちになる。
「時代の流れ」という言葉にまとめられ、良いものも悪いものも変わっていく。諸行無常とはまさにこのことである。しかしやはり受け入れられない私がいる。なまじそれが自分にとって“良い思い出”だったがために「今の時代の若者にも体験してほしかった」と思わずにはいられない。
仏道を歩む者ながら、教えに反することを思ってしまう。
まだまだ私の悟りは遥か彼方である。