鐘の役割 ②
お寺の本堂で、お勤めの際にお坊さんが打つ鐘を「鏧(キン)」といいます。ゴーンと大きな音が出ます。
それを家庭用に小さくしたのがお仏壇に備え付けられている「鈴(リン)」です。こちらはチーンと可愛い音が出ます。
サイズは違いますが、鏧も鈴も役割自体は同じものです。
さて、あなたはお仏壇の前で手を合わせる時、鈴を打ちますか?
「チーン」と打って合掌する―。おそらく日本人のほとんどが日常的にしているのではないでしょうか。
ただ手を合わせるよりも鈴を打ったほうが心もピシッと改まるし、何よりもお参りしている感じがするから、打ちたくなる気持ちは分からなくもありません。ですが、“合掌・礼拝だけ”の場合は鈴を打たないというのが正しい作法です。
前回の「鐘の役割①」にて書きましたが、鐘は「お経の始まりと終わりを聴衆に知らせるため」にあります。つまり鐘というのは「お勤め(読経)をする場合に使用するもの」なのです。だからお勤めをしない場合は鐘(鏧・鈴)を打たないのです。
「それならどうして仏壇に鈴が付いているんだ。使わないなら最初から付けなくたっていいじゃないか」
以前、うちにお参りに来られた一人の男性がそのようなことをおっしゃっていました。
いえいえ、違うんですよ。「お勤めをしないから鈴は必要ない」ではなく、「鈴を必要とするように日々お勤めをする」んです。“合掌・礼拝だけ”というのは略式です。お経本を開くことが本式なのです。
え? 読み方が分からないって?
だからお寺があるんじゃありませんか。本堂はコンサート会場のようにお坊さんのお勤めを「静かに聴く場所」ではありません。僧俗共に「一緒に称える場所」です。声を出せば自然と体が覚えますし、分からないことはどんどん尋ねたらいいのです。たとえ間違えたところで、そこにいるのはあなたの身内と仏さまだけですから、何も恥じることもありません。
そして、お寺で練習した成果をご自宅の仏さまに聞いてもらいましょう。
その際は遠慮なく「チーン」と打ってくださいね。