門徒式章

仏事の際に御門徒の方が首から下げる門徒式章(もんとしきしょう)。ところが昨今では身に着ける方も減ってきたせいか、「門徒式章を身に着けているけれども、何のためなのかはよく分からない」という方や、はたまた「門徒式章という言葉自体を知らない」という方もいらっしゃるようです。

門徒式章というのは「私は生涯にわたって阿弥陀さまの願いを聞いて参ります」という門徒としての自覚の証であり、それと同時に阿弥陀さまと対峙する際の正装としての役割をも果たす伝統ある法具の一つです。

門徒式章の原型となったのは江戸時代の「肩衣(かたぎぬ)」と言われています。

▲ 門徒式章
▲ 肩衣

肩衣は自分よりも身分の高い人と会う際に着用したもので、それは最高位の敬意を表していました。武士の場合は主君に対して、庶民の場合は公の場や仏前にて肩衣を着用していたのです(ちなみに武士の肩衣は肩が横に広く出ていますが、庶民のものは袖のない羽織のような形でした)。その後、肩衣は時代が下るにつれ、持ち運びの不便さから背中部分の布がなくなり、現在のような首に掛ける輪っか状のものへと簡略化されていきました。

形は変わっても、その‟こころ”は今も昔も変わりません。門徒式章はれっきとした「最高位の正装」ですので、普段のお仏壇の前でも、お寺参りの時でも、お葬式の席でも、仏さまを前にする時は必ず身に着けるようにしましょう(もし門徒式章を新たにお求めになりたい方はお手次のお寺へご相談ください)。

ちなみに門徒式章は紐の部分を下にして首から下げて使用しますが、その際、布の折り目の向きにご注意ください。

正しい向きは「布が折られているほう」が内側で、「布が開くほう(たまに縫われているものもあり)」が外側です。

布が開くほうが外側なのは、これが肩衣の名残だからです。

ポイント:門徒式章は真宗門徒にとって立派な正装。お念珠と共に持ち歩く習慣を。