お仏飯の心得と作法
お仏壇のお給仕の一つに「お仏飯」があります。仏飯器に少量のご飯を盛って仏さまにお供えすることをいいます。
どうして仏さまにご飯を供えるのでしょう。「仏さまに食べてもらうため?」、いえいえそうではありません。仏さまがおられるのは苦しみなき世界、極楽浄土。飢えも渇きもない世界ですので仏さまのお腹はいつも満たされています。
私たちがお仏飯を供えるのは「今、自分が生かされていることを感謝するため」なのです。
人間に限らず全ての生き物は皆等しく何かを食べて生きています。逆に言うと、食べなければ死んでしまいます。たとえどれほど大きな権力を持っていようと、使い切れないほどの財産を持っていようと、他者より優れた能力を持っていようと、その事実は変わりません。それはつまり食こそが命の根源であり、「私の命そのもの」ということです。
今日もこうして仏さまにお仏飯を差し上げることができるのも、幸いにして今日まで私の命を生かしめてくれた“いのち”があったからです。それ故にお仏飯は自分よりもまず先に仏さまにお供えすることが肝心です。
現代は食生活の変化で朝にご飯を炊かない(=パンを食べる)という家庭も多くあります。あるいは朝は食べずに夜だけ食べるというところもあるでしょう。それでも全然構いません。朝がパン食ならパンを供えればいいのですし、夜しか食べないのであれば夜にお供えしたらいいのです。繰り返しになりますが、「自分より先に仏さまにお供えすること」、それが大事なのです。
一般的なお仏飯の作法は次の通りです。
朝、ご飯が炊けたら、しゃもじの最初の一杯目をお仏飯にします。仏飯器に適当に盛り(正式には「蓮のつぼみの形」に成形します)、お盆に載せたら目の高さに保持して運び、お仏壇の仏さまの正面に供えます。
お仏飯を下げる時間帯は朝の十時から正午まで(これはお釈迦さまが在世のころ、僧侶の食事は一日一回で、午前十時頃にとっていたことに由来します)。そして下げたお仏飯は「仏さまからのお下がり」としてきちんと頂きます。
※ご飯は時間が経つとカピカピになって食べにくくなりますので、お下がりはレンジで温めたり、おかゆやチャーハンに調理したりして、美味しく食べましょう。
ちなみにお仏飯を供えるのは「口のある本尊」に限ります。ですので、もしご自宅の本尊が木像や絵像ではなく名号の場合はお仏飯は不要です。また時々、故人の遺影にお供えしている方もおられますが、お仏飯を供えるのはあくまでも本尊(仏さま)だけですので、本尊を通して故人に思いを馳せるようにしましょう。