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| 住所 | 鹿児島県薩摩川内市祁答院町下手2266 |
| 駐車場 | なし |
| アクセス | |
| 面白さ | |
| 虫 | |
| 訪問日 | 令和7年5月8日 |
洞窟までの道のり

民家のほうではなく左脇の草むらを通って奥へと進む。

道が右へ曲がる地点(ちょうど民家の裏あたり)で竹林の中に入る。

竹林内は倒竹も多く、荒れた状態。
竹をかき分けながら直進し、正面にある崖を目指す。

道路から1分22秒、洞窟に到着。
高さ12mほどの崖下に掘られた洞窟である。

入口は幅1.1m、高さ1.3m。
右上部に少し崩れが見られるものの、綺麗な三角形が保たれていた。
構造と内部の様子

▲洞窟内を上から見た図(番号は撮影位置、矢印はカメラの向き)
・シラスを掘って作った水平方向の念仏洞。
・広さは大人6~8名が座れる程度。内部の高さは1.5m。
・壁下に空気穴らしきものが設けられている。

①
洞窟内部から見た外の様子。
前方にある土砂は入口上部の土(シラス)が落ちてきたもの。
おそらく以前は平坦で、もっと視界が開けていたと思われる。

ちなみにこちらが入口上部(外から見たもの)。
竹の地下茎や風化の状況次第では今後さらに崩れていく可能性が高い。

②
洞窟内部全景。
一部屋だけのシンプルな造りで、室内は無臭。
森の中にあるせいか湿度は若干高い。

③
最奥部にある小さな部屋。
幅0.7m、高さ1.2m、奥行き0.9m。
きっと祭壇跡なのだろうが、一見すると「作りかけの通路」のようにも見える。

④
その地面には日照不足で生育できずに枯れてしまった竹の残骸。
竹には悪いが、洞窟の状態維持という観点からは枯れて幸いだった。

⑤
入口付近にある謎の穴。
地面すれすれに設けられており、直径は0.2mほど。
ただ奥行きはかなり長く、確認できただけでも0.8m以上はあった。
上に向かって伸びていることから空気穴と推測。

一旦、外へ出て周囲を散策していたところ、今見てきた洞窟の入口から左に4.7m離れたところに幅0.18m、高さ0.13mという非常に小さな穴を発見した。
はっきりとは確認できなかったが、中は結構な空間が広がっている模様。
もしかすると、この空間も念仏洞跡なのかもしれない。
洞窟周辺の様子
下手の念仏洞①とは300mしか離れていないが、住宅密集地に位置している①とは違い、こちらはポツンと離れた民家の裏に位置している。それゆえ正面の道路は車も人もほとんど通らないような状態である。
まして洞窟があるのはこの民家の裏の竹林の奥である。
まず発見されることはなかっただろう。
調査を終えて
ここは「下手の念仏洞①」(便宜上、ここではそのように表現する)を探している最中に見つけた洞窟である。
「下手の念仏洞①」の存在は『祁答院町史』(祁答院町誌編さん委員会 1985年)より知ったのだが、同書の巻末付属の地図(祁答院町史跡地図)通りに訪ねてみたところ、ここに辿りついたのだった。
しかし入口の形が『祁答院町史』記載の「下手の念仏洞①」の写真と明らかに異なることから別の場所ということが判明。その後たまたま出遇った付近の住人に話を伺って、この「下手の念仏洞②」の調査後に本命も見つけたという転末である。
ではここは果たして念仏洞なのか?
私の答えは「是」である。理由は2つある。ひとつは『祁答院町史』の地図に“かくれ念仏洞”ときちんと表記されていること(地名の表記はなく、“かくれ念仏洞”としか書かれていない)。そしてもう一つは先の「たまたま出遇った付近の住人」より聞いた「生の声」である。
その方は私に3つ4つ、付近の洞窟を指で示した(残念ながらそれらは既に埋まっているという)上で、「自分が子供の頃、この辺りには念仏洞がいくつもあり、遊び場にしていた」と話してくださった。つまりこれはこの地域に「下手の念仏洞①」以外の念仏洞がある(あった)ことを示唆している。
一応、防空壕の可能性も捨てきれないが、入口が小さめなこと、入口に辿りつくまでに竹林をわざわざ通らねばならないこと(しかも斜面になっている)、空気穴の存在、の3点を考えると、念仏洞が妥当と思われる。
「名のある念仏洞」と「名もなき念仏洞」。極めて近い場所にあるにも関わらず2つを分けたのは「公」と「私」の違いだったのかもしれない。「公」は伝承されやすいが、「私」はいつか途絶える。そんな中、ここを見つけられたのは本当に偶然以外の何物でもない。
もし今後、ここに関する新事実が見つかった際には追記したい。

