アクセス
直接場所を示す看板等は無い。
公園内にある「偲ぶ橋」の近くの石仏(写真下部)が目印。
そこから少し距離を取って見上げると、石仏の斜め上方向の斜面に洞窟の入口が見える(写真下の丸部分)。
ただし、斜面が急勾配のため、ここからは登れない。
洞窟までの道のり
第一駐車場から偲ぶ橋へ続く小道を進む。
途中で小道を逸れ、脇道に入る(矢印方向)。
脇道の先にはお墓(?)。
その前を通り過ぎ、左側へ。
ここから先は完全に道がなくなる(そもそもここは人が通る場所ではない)。
竹藪をかき分け、崖から落ちないよう足元に注意しながら、洞窟入り口を目指す。
駐車場からスタートして10分、入口に到着。
地上からの高さは7mくらいだろうか。
かなりの急斜面で足場が悪い。
眼下には偲ぶ橋が見える。
洞窟の入口。
幅1.1m、高さ0.9m。
構造と内部の様子
▲洞窟内を上から見た図(番号は撮影位置、矢印はカメラの向き)
・シラスを掘って作った横穴式の洞窟。
・洞窟内の高さは1.5m。広さは大人8人ほどが座れる程度。
・入口はAとBの2つがあるが、Bからの侵入は不可。
①
内部から外へ向かって撮影。
洞窟内部は入口よりも低い。
中の光が外へ極力漏れ出ないようにしたかくれ念仏洞に多く見られる工夫である。
②
大抵の念仏洞は入口が一つしかない(あるいは複数あるが、互いの距離が離れすぎている)ため、空気が淀んでいることが多い。
しかしここは2つの入口が近いこともあって、風がよく通り、空気が澄んでいる。
ゲジゲジがいないのもうれしい。
③
洞窟の中間には大きな窪み。幅0.7m、奥行0.9m、高さ1.2m。
おそらく仏壇が安置されていた場所だろう。
④
近年までお参りする人がいたのか、窪みの下には陶器の花瓶が1つ転がっていた。
⑤
壁は手彫りの跡が今なお綺麗に残っている。
⑥
内部から見たBの入口。
Aと同様、こちらも入口が高い。
⑦
外から見たBの入口。
Aと比べるとやや縦長。幅0.8m、高さ1.2m。
ちなみに道はおろか、足場すらこちら側にはない。
実は1.5m右側にはもう一つ、念仏洞らしき穴がある。
奥を覗くと中が空洞になっていることがなんとなくうかがい知れるが、入口がほとんど埋没していて中に入ることはできない。
入口の大きさは幅0.3m、高さ0.2m。
先の洞窟同様、こちらの洞窟も少し離れた場所にもう一つの穴(の跡)がある。
したがって、構造自体はおそらく先ほどの念仏洞と同じと思われる。
洞窟周辺の様子
岩屋公園は摩崖仏遺跡を中心として森を切り開き、整備された公園である。
公園内を縦断しているのは万之瀬川。この川を境にちょうど向かい合うような形で摩崖仏と念仏洞が共存している。
なお念仏洞と最寄りの集落との距離はおよそ800mある。
調査を終えて
岩屋公園の念仏洞は状態も良く、歴史的価値も十分にある貴重な史跡であるにも関わらず知る者は少ないという「忘れられた念仏洞」である。事実、公園内にある総合案内図にもその記載はないので、公園の管理者すらももしかしたら知らないのかもしれない。
ちなみにここは野間大久保の念仏洞、田部田の念仏洞と共に光明寺(南九州市川辺町)の住職より教えて頂いた場所の一つである。住職によると「自分が子供の時、洞窟の前は現在のような断崖絶壁ではなく、きちんと地面のある山だった」という。
このことから察するに、公園整備の際に摩崖仏への行き来の利便性のため、山の一部を崩して川べりに遊歩道が設置され、その結果として洞窟正面が崖になってしまったのだろう。
洞窟内部に関しては特筆することはないが、川を挟んで摩崖仏と念仏洞が向かい合っているという立地の状況は興味深いところである。
両者は成立年代も製作意図も全く異なるものであるが、近しい場所にあるという事実から考えるに、ここがあまり人が立ち寄らない場所であったこと、加えてここが当時の人々にとって何らかの神聖な場所であったのだろうと推測する。